お登りさん日記

ほぼ岩の記録。課題のネタバレはがっつりするので悪しからず。

瑞牆、大面岩下エリア観光(大審問官、decided、ハレ、雷帝、コオモテ、べシミ)

定期的にブログ更新がめんどくさくなるけど生きています。

ブログにはしてないけど幕岩とか鳳来とかのボルダーを登ったり御岳のin tokyoに敗退しまくったり御前岩でリードしたりしていました。

アップとアプローチ

そして先週くらいに瑞牆に久しぶりに行ってきたので生存報告を兼ねて更新。

たまたまジムで以前豊田に連れて行ってくれたSさんにあったので瑞牆行きたい!といったら快く車に乗っけてくれた。

現地に着くまで百鬼夜行に行く気満々だったけど、同行した激強クライマーのRくんの希望で大面岩下エリアに行くことに。

ぎりぎりゲートが開いていない時期だったので皇帝とかがある場所まで15分くらい歩く。

Sさんパーティーは皇帝の岩でアップするのがルーティーンらしく、自分もそれに倣ってアップを始める。

ヴォック上部の5級くらいスラブとか無名7級とか御門(みかど)4級とかをやった。

この岩は確かに簡単な課題も揃っているし下地もいいのでアップしやすい。

アップの締めにヴォック(初段)も触ってみたが、去年の秋にちゃんとトライして敗退しているので、全然簡単には登らせてくれない。

一瞬で諦めたけど、Rくんは3回くらい登ってた。強すぎ。

そんな感じで体を温めて、いざ大面岩下エリアへ。

10分くらい永遠に感じられる勾配を登って、そのあとは踏み跡にそって20分くらい歩く。

寒さ対策で上着を着ていたが、アプローチで汗だくになった。

エリアに着くと、まず瑞牆トポ96番と97番の岩が左手に見える。大した課題がある岩じゃないけど、97番の岩は妙に赤茶けた色の岩で印象的なので目印にしやすい。

そこから少し険しい勾配を登って、Sさん目当ての雷帝の岩が見えてくる。一際でかい岩なのでこれも目につきやすい。

Sさんと一緒に雷帝をトライ開始、 Rくんと、もう一人同行していたKさんはすでに完登ずみとのことなので、僕たちを少し応援してからさらに上に移動して生命力がある岩へ。

雷帝(初段)

Sさんは以前トライしていたらしく、その時は上部の恐怖核心な足上げができずに敗退したとのことで、その練習から始めていた。

僕はこの課題について何も知らなかったが、ワンチャンフラッシュ狙えるとそそのかされたのでとりあえずスタートからやってみる。

スタートは出っ張ったおつまみホールドで、これは問題ない。足も右側が大きめの棚上になっているので不安はなかった。

初手、フラットなアンダー、と見せかけて悪めのカチ。アンダーカチなので足で重心を高くして踏ん張る。

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初手。意外と悪い。

二手目、雷帝のカミナリ型ホールドの一番下の段を二本指でカチる。エッジはあるけど結構きつい。結局これで足が上がらずに落ちてしまった。あえなくフラッシュトライ終了。

このあと、足はスタートにあげると良いと教えてもらったが、めっちゃ狭い。大してタッパがあるわけでもないのに狭い系が苦手なので横に走っているクラックを踏んでみたりしたがうまくいかず、結局二本指カチを頑張って耐えて狭い足上げをこなすことにした。

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二手目から足を上げて三手目を狙っているところ。狭くてしんどい。

数トライして、どうにか踏ん張り、三手目のカミナリ型ホールドの上から二段目、カバカチ取りまで進むことができた。そこから右側のクラック部分のガバを取り、薄いフレークを持って、岩の面をスメアっぽく踏んで上がっていく。

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フレークを持って上がっているところ。浅くはないが深くもないのがこの課題のスパイスな感じ。

フレークに右ガストンで差し込んだら、カミナリホールドの一番上に足を乗せる。これがいまいち信用できなくて怖い!それなりに出っ張っているので、乗れそうなのだが、効かない方向に傾いているので滑りそうな感じがしてならなかった。

とりあえず踏んで、でかい段差にカチがあるのでそこに手を伸ばす。これが初手と同じくらいな悪さですっぽ抜けそうに感じる。

これが怖くて、この後の右足上げをする勇気が出ずに数トライ消費した。

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怖い足を踏んで、怖い左手を取りに行っているところ。激悪ではないが、恐怖核心。

Sさんもこのパートを気にしすぎて、前回問題なかった初手のアンダーが持てなくなり、負のスパイラルに嵌っていた。

そして僕も同様に、下部の二本指カチからの足上げができなくなってしまい、現場の雰囲気は悪くなっていく。

何が悪いのかわからずに二人ともトライ数だけが増える。ここでふと、「上部を警戒しすぎて、無意識に下部を温存して突破しようとしているのでは?」と思ったので、Sさんに「下部もちゃんと持ちましょう」と伝えると、その次のトライでSさんも初手が持てるようになり、僕も二手目からの足上げができるようになった。

ちゃんと持つ。大事。

上部はどうせびびって必要以上にちゃんと持っているので、勇気をもって足をあげる。クラック状の中にあるガバに足を突っ込むので、かなり狙いにくい。一回外したが、次で入ってくれた。

この足はガバ足なので、安心して次の手を出せる。次の手はガバで、実質この課題は終わり。後はめっちゃ長いスラブのウイニングロード。

途中、横のthe face(13a/二段)側まで歩いてから再びスラブを登らなくては行けないので、完登して安心してる分、逆に足が滑るんじゃないかと不安でしょうがなかったが、無事登ることができた。これにて雷帝攻略。でかい岩は登ると満足感がある。

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雷帝の上部まで上がったところ。ガバスラブだけど針葉樹の枯れ葉が積もっていて少し怖かった。

Sさんは結局敗退してしまったが、いったん先に生命力の岩まで上がって行ったRくんKさんたちに合流することにした。

大審問官(五段)

合流の途中に大審問官の岩があるので、観光する。

五段な上に強そうな名前をしているから、勝手にそれなりにデカくて威圧的な風格のある岩だと思っていたが、存外小さな岩だった。

少し拍子抜けしつつ、かのトシタケウチが「今まで持ったカチの中で最も細かいカチだった。」と書いていたランジ手前の超マイクロカチをこの目でみてみたい!と思ったが、マイクロすぎて見ただけではわからなかった。

確かにチョークの跡があるが、実際に触っても、無い。

花崗岩のスラブ課題でようやくホールドとして使いそうなデカめの結晶が人差し指と中指の先に感じられるが、僅かに傾斜しているこの岩では、普通はホールドとして認識しないレベルのもの。それをトップレベルのクライマーたちは超マイクロカチと呼んでいたのだった。

これを持ってランジする彼らにも脱帽ものだけれど、初登者はここにラインを見出し、ホールドを発見し、ムーブを発見し、完登していると思うと、ちょっと理解を超えるようなセンスを感じざるを得ない。

岩を登り始める前のインドアクライマーだった頃の自分は、岩場で開拓を行う人たちの「開拓はクリエイティブな作業」というような表現に、「クリエイティブとかいい感じの横文字使ってカッコつけたいだけでしょw」くらいに猛烈にナメていたのだが、確かに、見た目からは存在が認識できないホールドから、ホールドを見つけ出し、ムーブを構築し、完登する一連のプロセスはクリエイティブだなと実感するほどのものだった。

ひとしきり感動したところで、生命力の岩へ。Kさんがトライ中だったが、そのままコオモテの岩まで登って荷物をおろし、せっかくだからと瑞牆最奥のdecided(五段)がある岩まで見にいこうとなった。

ハレ(四段), decided(五段)

生命力の岩から悪めの斜面を上がっていくとハレの岩がある。何かの動画でトモアがさくっと登ってたのを見たのが印象的だった。

実際に見てみると傾斜にわりに距離感がかなり遠い。そして、振られを耐えるためにスタートホールドをアンダー気味にピンチしないといけないのだが、そのホールドも悪いし、出先のホールドも花崗岩のわりにフリクションが少なく、なんとなく滑る。

その跡は角ばったガバをガシガシ持って登って行けそうだが、オブザベで可能性をあまり感じない雰囲気を醸し出していた。

でも猛烈に強傾斜だし、ホールドが全体的に角ばっていてなんとなくカッコいいのでいつかトライしてみたいと思った。

ひとしきりハレを観光したので、そのまま最奥まで上がっていきdecidedを見ることにした。

距離はそこまで遠くないが、斜面で足元もあまりよくないのでヒイヒイ言いながら登っていくと、decidedの裏側のでかいフェースが見えてくる。

裏へ回ると、動画で見た光景が目に入ってくる。

ホールドを見ると、どっかぶりなので大審問官のように無のホールド、というわけではなく、結構顕著に持ちどころがあるし、スタートは意外とガバな感じだった。

しかし二手目から甘くて悪いカチがあり、これを持ってデッドしてるクライマーがいることに驚かされた。

上部は届かなくて触れないので、row startのunitedのポッケに指を突っ込んだり村井隆一のヒールのやばさをホールドから感じたりしていた。

unitedはトシタケウチでも一年以上かけてまだ登れていないようなので、現状の国内最難課題と言っても過言じゃないだろう。

コオモテ(三段), べシミ(二段)

decidedを観光した後、コオモテの岩まで戻ってRくんと先客パーティーと一緒にトライ。

どルーフからピンピンの初手カチ取り。滅茶苦茶無理。ガバスタートでヒールをスタックさせて距離だしするので、初手を取り損なうと引き戻される勢いが強く、下の岩にぶつかりそうになる。下地も悪く、マットが充実していないとやりづらい。

いったん初手は諦めて上部のポッケのパートをやってみることにした。ムーブはいろいろあるみたいだが、オーソドックスそうなポッケを両方使ってリップにヒールを先行で出すムーブを試す。

右手のポッケは俵持ちで3本入り、左手は2本入る。第一関節ちょい手前くらいまで入るが、外径しているのであんまり楽でもない。ぶら下がるくらいはできるといった感じ。

この状態から頭より上のリップにヒールをあげないと行けないらしい。僕ではいきなりヒールを届かせることはできなかったのでトウフック→右手出し→ヒールに直す→左手出し、という手順になった。とりあえずこの部分はすぐできたので、後は初手からポッケ取りと振られに耐える部分。

初手をまた数回練習したが、成功するより下の岩に頭をぶつけて死ぬほうが早そうな雰囲気だった。

この時点でもうあんまり完登する気はなかったが、どルーフを堪能すべく、初手が止まった体でポッケ取りを試そうとしてみる。

ほとんど180度のルーフで足の入れ替えを何度もする必要があって、猛烈にヨレる。結局ここもできず、ルーフを抜けて振られに耐えるムーブは試せなかった。

Rくんは結構早い段階でバラしを完了したが、つなげるとやはり辛いらしい。生命力を登って合流してきたKさんも初手に苦戦していたが、初手くらいは止めておきたい、と粘って最終的に止めていた。

横のべシミ(二段)もやりたかったので、コオモテは今回は種まき、と言い訳をして敗退。べシミに標的を変更。

べシミもコオモテほどの距離はないが、同じようにどルーフから距離出しで初手、ルーフを抜けてからコンプレッションで頑張る、といった内容。

下地はこっちの方が断然良いが、石ころが結構転がっているので変な落ち方をしたら怪我をするかもしれない。

とりあえずスタートを数回試すが、止まらない。

主に最初のヒールの位置をこねくり回すが結局できず、結局スタートの手をクロスして始めたらあっさりできた。不思議。

初手を止めたらこちらも足の入れ替えを何度かこなし、水平方向にクソ遠い左手出しをする。

大体想像してた場所より30cmくらいは先にホールドがあり、え?ホールド逃げた?と錯覚した。

肘が90度になる程度の固めでは届かず、そのまま固めている腕を伸ばしていかないと届かない。

やむなくデッドするが、それでも指先は届くが耐えられない。Rくんに腕サイファーっすよ!と教えてもらったが、意味不明。サイファーの振って勢いをつけるのを腕でやるらしいが、普通にデッドしたほうが距離が出たのでこちらで試すが、やっぱりできない。

左手出しの後のパートも試してみたが、さらにちょっと遠いカチ取りになるので結構絶望した。瑞牆の二段は鬼。

結局このまま敗退。正直べシミはもうそんなに再戦したい感じじゃないが、コオモテは面白かったのでもう少し強くなってまたトライしたい。

その後はお喋りしながらRくんを応援したが、Rくんもコオモテ敗退。このころにはもうほとんど夜になっていた。下山中、人がいなくなりすぎてシカがそこら辺を走っていた。

夕食は付近の中華料理屋へ。店の名前は忘れたけど、入ったらすぐに気さくなおばちゃんがクライマーと気づいてくれた。どうやらクライマーばっかりくるところらしい。

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ラーメンエビチリセットを頼んだら両方一人前くらいの量で出てきた。

Rくんは唐揚げセットを頼んだが、唐揚げがデカすぎて敗退しそうになっていたが、どうにか完食。中華料理屋の飯、多すぎがち。

結局成果は雷帝だけだったが、有名な高グレード課題をたくさん観光できて満足度の高い日だった。